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2009年1月28日の記事

2009.01.28

ラーメン学校とメンマ事件

ラーメン学校

(ガラガラガラ)

「よーし、みんな席につけー」
「起立! 礼! 着席!」
「おい鈴木、このラーメンをみんなに配ってくれ」
「はい」
「ええーっ!? 抜き打ち醤油テストかよ!」
「注文してねーよ!」
「制限時間は5分だ。それじゃ始めるぞー」
「店長ー、割り箸忘れましたー」
「ったくしょうがねえなぁ。宮本、お前貸してやれ」
「ええー、またー? もう、ちゃんと洗って返してよね」
「えへへ、いつも悪いな」
 
(2分後)
 
「先生ー! 田中くんがカンニングしてまーす!」
「してねーよ! 何言ってんだよ!」
「してたでしょ! さっき私のナルトを覗いてたじゃない!」
「覗いてねーよ!」
「ウソよ! それにメンマだってまだ残ってるし!」
「こ、これは今から食べようと思ってたんだよ……」
「フン、どうせまたわざと床に落として残すんでしょ?」
「なにィ! お前だっていつもネギを机の下に隠してるくせに!」
「しーてーまーせーんー!」
「おいおい、二人ともやめろ。スープがこぼれてるぞ」
「だって店長、田中くんっていつもメンマを残すんですよ」
「しょうがないだろ。田中の家族はメンマが原因で……あっ!」
「……………」
「えっ? なになに? 店長、どういうこと?」
「いや、えーっと、何でもない。ほら! テストを続けなさい!」
 
(ガガガガッ)

田中が突然席を立ち、
500円を置いてラーメン学校を飛び出して行く。
 
「おい田中! 待てっ!」

(タッタッタッタ)
  
すぐに田中を追いかける店長。
入口のドアから入ってくる冷たい風。
呆然とする店内。
 
「どうしよう……私のせいだよね……どうしよう……ぐすっ」
「違うわよ。美奈子は何も悪くないよ。だから泣かないで」
「よーし店長がいなくなったから自習だー!」
「ひゃっほーい!」
「ちょっと男子! 静かにしてよ!」
「なんだよ……醤油テスト終わったんだから別にいいだろ?」
「鈴木くん、みんなのどんぶりを回収して洗って!」
「ええー? ボクがぁ?」
「何よ? イヤだって言うの!?」
「いえ、イヤじゃないです、やります……」
「鈴木かわいそー」
「委員長こええぇー」
「でもどうしちゃったんだ、田中の奴」
「メンマがそんなに嫌いなのかな? ウマイのに」
「オレは知ってるよ。田中の家で起きたメンマ事件……」
「な、なんだよメンマ事件って!」
「健司、教えろよ! 何があったんだ!?」
「あのね、たしか2年前のクリスマスの日に……」
「やめて健司くん!」
「……!!」
 
委員長が立ち上がり健司を睨みつける。
集まる視線。
 
(ガシャーン)
 

鈴木がどんぶりを落として割ってしまう。
そこに集まる冷たい視線。
 
「ご、ごめん……」
「鈴木、お前もう帰れよ」
 
そして再び委員長に視線が集まる。
メガネを中指で上げて、ため息をつく。
 
「もうそれ以上…… 田中くんの話はしないで」
「どうしてだよ?」
「どうしてもよ!」
「……………」
 
流れる沈黙。
お互いに目配せをする生徒たち。
 
「……そっか」
「わかったよ……みんな、行こうぜ」
「ああ」
  
そして全員立ち上がる。
 
「おひとり様500円になりますー」
「はい。ごちそーさまー」
「ありがとーございましたー。またお越し下さいませー」
 
 
っていうシステムの店だな。(めんどくせーな)
 
 
 
実録・メンマ事件の真実

■『メンマ事件とは』
 
田中の父親は、委員長の父親が経営する中堅食品会社
「成金フーズ」に勤めていた。
しかし、業績不振の影響でリストラ候補になってしまったため、
自ら早期退職を申し出て、それで得た退職金を元手に、
子供の頃から大好きだったメンマを世界に流通させるため
メンマ製造会社「メンマホープ」を設立する。

中国に工場をつくり「安い、ウマイ、安全」をモットーとして
順調に業績を伸ばすメンマホープであったが、
4年前の春、成金フーズへ納入したメンマから
大量のメタミドホスが検出されてしまう。

すぐに工場を検査するも、まったく異常は発見されず
衛生管理状態は完璧で、混入ルートは謎のままだったのだが
執拗に報道を続けるマスコミなどの影響もあり
メンマホープの業績は加速度的に悪化を続け、
その年の11月、ついに廃業へと追い込まれてしまった。

多額の負債と、売れ残った大量のメンマを抱える田中一家。
このままでは路頭に迷ってしまうと不安に駆られた母親は
ある日、ひとつのアイデアを思い付く。
 
起死回生の手段として、その年のクリスマス商戦へ向け
クリスマスケーキに対抗した画期的なヘルシースイーツ
「クリスマスメンマ」を開発し、ネットショップで
販売しようと言い出したのだ。

そして、そのミステリアスな商品が奇跡を呼び起こす。
 
なんと、たまたまエロサイトを検索していたエスパー伊藤が
偶然その商品を見つけ、自分のブログで紹介したところ
エスパー伊藤をこよなく愛する全国のOL達の間で火が付き
わずか2週間で在庫を一掃する1万個の販売を達成したのである。
 
田中家はその後も「おせちメンマ」「バレンタインメンマ」と
次々とヒット商品を世に送り出し、負債を返済するどころか
わずか1年にして大富豪の実業家へと変貌を遂げていった。
そして今までにない贅沢な生活を送るようになった。
 
“聖夜に地獄から蘇った奇跡のメンマファミリー”
 
国中のメディアがそんな風にその一家をもてはやす中、
何を血迷ったのか母親が突然新会社を設立すると言い出した。
その名は「サマンサメンマタバサ」。
 
母親は自らその会社の社長に就任を果たすと、
メンマをモチーフにした斬新なキモカワデザインで
ファッション業界に殴り込みをかけたのだ。

服、バッグ、靴……
あらゆるモノを企画し、商品化した。

しかし、結果は惨敗だった。

全く売れず、すぐに負債が膨らみ、商品は在庫の山を築き上げ、
それとは逆に今まで築き上げてきた富と名声は瞬時に崩れ落ちた。
そして、それと時期を同じくして、爆発的に売れ一世を風靡した
メンマスイーツも既にブームは過ぎ去り、人々から忘れ去られた。
 
「今度こそ本当に路頭に迷うしかないのか……」

田中家の電話が鳴り響いたのは、そんな絶望的な夜だった。
かけてきたのは委員長の父親、つまり成金フーズの社長。
内容はこうだ。
立ち行かなくなった「サマンサメンマタバサ」の会社と
ブームが過ぎ去ったスイーツメンマ事業を、負債を含めてすべて
成金フーズが買収したいという提案だった。
さらに失墜したメンマ事業を復活させるために新たな会社
「スイーツメンマフーズ」を完全子会社として立ち上げ、
田中の父親を社長として迎え入れ、そして母親を
サマンサメンマタバサの社長として留任させると言うのである。
 
田中家にとっては渡りに船。まるで神様からのラブコールだ。
しかし、なぜ価値のなくなった会社を欲しがるのか。
それも負債まで……
田中の両親はその点を訝しみながらも提案を承諾した。
家族がこのまま生きるためには他に選択肢がなかったからだ。
一度味わってしまった奢侈的な生活は、できれば忘れたくない。
多くの人間がそうであり、それが田中の両親だった。

そしてその後、本当の意味でのメンマ事件と呼ばれる
「第2次メンマ事件」が起きたのである。
なんと、業績を伸ばしてジャスダックに上場を予定していた
成金フーズの粉飾決算疑惑が浮上したのだ。

『成金フーズが、子会社であるスイーツメンマフーズと
 サマンサメンマタバサを利用して収益の架空計上を行い、
 また、保有するその2社の株式評価損を圧縮することで
 利益を不正に水増して黒字を確保した粉飾決算の疑いあり』

この記事をスクープしたのはフリーライターの木元龍司。
健司の父親だ。
 
しかし、この記事がいくらマスコミを賑わせても
成金フーズの社長は疑惑を否定し続けた。
事実無根である、と。
それどころか数日後、その社長は、
2つの子会社の社長たちが自分を陥れるために
結託して陰で偽装工作をしているのだと言い出した。
何でもそれを証明するための証拠まで手に入れたと言う。
 
「あの時、私は彼らの危機を救ってあげたつもりだったが
 恩を仇で返されました……
 まさかこんな仕打ちをされるとは……
 私に何の恨みがあると言うんだ…… 残念でならない……」
 
カメラの前で涙を流しながら語るその言葉に報道が加速する。
そして、次のマイクの矛先は自然と
子会社の社長である田中の両親2人に向けられた。
家の周りには毎日マスコミの車が何台も張り込み、
多くの野次馬まで現れるようになっていた。
中には勝手に裏口から入ってくる暴力団風の男までいたという。
電話も鳴りやむことはなかった。

しかし、2人には粉飾決算など全く身に覚えがない。
それに関わった記憶など微塵もない。
ひょっとして知らないうちに不正の片棒を担いでいたのか。

「私達は無実だ。
 真実は証明され、疑惑はいつか必ず晴れる。
 それまで世論の偏見などに惑わされず、2人で頑張ろう。
 息子のためにも……必ず」
 
フリーライターの木元に電話口でそう話していた2人だが、
それ以来マスコミの前に姿を現すことはなかった。
いや、マスコミの前だけではなく、
息子の前にも元気な顔を見せることはなくなった。
 
あの男が疑惑のボールを田中家に投げつけてきてから数日後、
2人は自宅の寝室で亡くなっていたのだ。
それは2年前のクリスマスの夜だった。

“聖夜の奇跡から聖夜の悲劇へ”

こんな見出しがメディアを駆け巡った。
警察発表は「自殺」。
密閉された寝室で練炭が焚かれていたらしい。
そして、それを発見したのは息子。
両親の周りには無造作に燃やされた財務諸表もあったそうだ。
しかし、遺書は無かった。
 
“2人は本当に自殺だったのか?”

現代のマスコミは、素直に警察の発表を信じない。
憶測が好きで、推理を煽るようにして人の目を引き付ける。
それがいい時もあれば、悪い時もあり、
偏見報道により被害者を増やす場合もあれば、
僅かな材料から世論を味方につけて真実を暴き出し、
名誉を回復させる場合だってある。

“成金フーズ社長、証拠不十分で不起訴処分へ”

フリーライターの木元は、今もこの事件を追っている。
あの時の言葉を信じて、
そして、残されたひとりの男のために。

ちなみに最近、木元はバイトで助手を雇ったらしい。
名前は美奈子。
新聞記者を目指している元気な高校生だ。
  


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